フィリピン経済の情勢や今後の見通しは、フィリピン不動産の投資が成功するか否かを判断するうえで重要なファクターとなります。
今回はフィリピン政府が発表した経済政策の内容や権威ある調査機関によるリポートをご紹介。今後のフィリピン経済の見通しだけでなく、現状の課題なども見ていきます。
特にこれからフィリピンの不動産を購入しようか考えている方は、判断の参考になさってください。
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目次
フィリピン政府が発表した経済政策の内容とは?
貧困率の低減と治安の改善
ドゥテルテ政権は、2022年までのビジョンとして、国内の貧困率を現状の26%から17%にまで下げ、2040年までには貧困を根絶することを目標として掲げています。経済が急成長しているとはいえ、国民の貧困が問題となっているフィリピンでは貧困率の低減は今後の課題です。
同時に治安の改善策として、国内でのイスラム過激派との衝突を避けるべく、イスラム自治政府の樹立を認める法律に署名し、早ければ2022年に自治政府を誕生させる見通しとなっています。また麻薬撲滅運動にも積極的に関与しています。その容赦ない手法には非難の声もありますが、これまでの大統領が目をそらしてきた暗部にあえて切り込む姿勢は高く評価されています。
とはいえまだまだ道半ば、フィリピン経済を語る上でネックとなっているこれらの問題がどのように推移していくのかを慎重に見守っていく必要があります。
国民総所得の引き上げ
貧困率を下げるには国民総所得の引き上げが必要です。そのために国民一人当たり3,000米ドルの所得を、2022年までに4,100米ドルへ上げ、現在のタイや中国と同程度にまで持っていこうとしています。
さらに2040年には12,000米ドルへの引き上げを目標としています。これは現在のマレーシアや韓国と同程度で、高所得国への仲間入りを果たそうとしています。
そのために2018年に実施された税制改革では、個人所得税の引き下げを実施。また所得格差が大きいフィリピンにおいて教育や訓練、人材開発へも投資を行い、より収入を増やす取り組みも行われています。
積極的なインフラ投資
フィリピンの電力コストは、アジアでは日本や中国などに次いで4番目に高い一方で、電力供給が不安定なことから電気が落ちる、ネット環境が悪いなどと言われています。また首都圏を中心に増え続ける人口に対して鉄道や高速道路などのインフラ整備が追い付かず、慢性的な交通渋滞も深刻化しています。
こうした現状を打開するために現政権では「Build Build Buid」をキャッチフレーズに、積極的なインフラ整備を進めています。2017年から2022年までの6年間で総額8.4兆ペソの予算を投じて、メトロマニラの地下鉄計画や国際空港の拡張工事などを行っています。
権威のある調査機関はフィリピン経済をどう見る?
世界銀行は高い経済成長率を予測
2020年度のフィリピン経済における状況予測として世界銀行では、経済成長率を6.1%と予測しました。具体的には2019年の経済成長率を5.8%、2020年を6.1%、2021年と2022年の予測をそれぞれ6.2%としています。
これは2016年に就任したドゥテルテ大統領の大胆な経済政策や税制改革、インフラ整備への投資により、フィリピン経済が順調に成長していることを評価した結果です。
またドゥテルテ大統領は日本をはじめとする海外からの投資を歓迎しており、汚職や治安の改善など投資をする上でのマイナス面の改善を目指しているということも考慮された結果と考えられます。
世界中で不動産サービスを提供するコリアーズのマーケットレポート
- マニラ首都圏の交通渋滞に対応するべく、コリビング関連のプロジェクトが進んでいる。(コリビングとは様々な職業の人が仕事をしながら過ごせる住職一体型施設のこと)
- 中心業務地区の周辺で中間所得者層向けコンドミニアムユニットの販売が活発化している。これは中心業務地区で開発可能な土地が不足していることに由来する。
- マニラ首都圏以外で土地の取得やオフィス建築が相次いでいる。これは政府のインフラ整備計画を受けてのことで、BPOを含むテナントの確保が課題となっている。
このようにコリアーズでは公共インフラ支出に支えられ、フィリピン経済は今後も上向きになるだろうとしています。またこれまでの中心地区からその周囲へと開発が進むであろうということも予測しています。
三菱UFJ国際投信はフィリピン経済の堅調さを強調
三菱UFJ国際投信が2019年12月に作成したアジア投資環境リポートによると、輸出の低迷によるアジア諸国の景気の鈍化に比べて、フィリピンは政府による公的投資や民間消費の伸びからも景気が堅調であると結論づけています。
一般消費では耐久財消費や飲食、宿泊などのサービスが伸びており、失業率も10年前が7.5%だったところ、5%にまで減少。
外需ではサービス輸出やBPOの他に、海外からの来訪者が増えたことで旅行業の売上がアップしました。輸出面では電子部品の売り上げが落ちることで製造業が鈍化しましたが、公共建設の回復で建設業は上昇。
これにより2020年も堅調な内需が製造業の鈍化を吸収し、景気を下支えしてくれると予測しています。また政府によるインフラ政策によりODAなどによる投資が加速、民間投資も利下げの効果によりいっそうの伸びを続けるでしょう。
フィリピン経済における現状の課題は?
製造業の成長
フィリピンでは他の国々に比べて製造業の裾野産業が発達していないのが現状です。副資材以外の部品を調達できる現地の供給元が足りないため、材料は輸入に頼らざるを得ません。
結果的に材料費がかさんでしまい、人件費が安いというフィリピンならではのメリットが相殺されてしまうのです。
自動車産業を例に例えると、部品数が多いガソリン車の製造は難しいかもしれませんが、それに比べて使う部品が圧倒的に少なくて済む電気自動車にするなどの発想の転換が必要になるかもしれません。
公共インフラの整備による土地価格の上昇
ドゥテルテ大統領による大規模なインフラ整備政策により懸念されるのが、土地価格の急激な上昇です。
現在のフィリピンではBGCやマカティなどの一等地に建つコンドミニアムでも、日本のマンションと比べて約4分の1の価格でした。この割安感が海外投資家の目に留まり、フィリピンの投資ブームとなりました。
今後インフラが整備されるとますます地価が上昇し、このメリットが得られないことも考えられます。
まとめ
今回はドゥテルテ大統領が打ち出した経済政策の内容や、世界銀行などの調査機関のレポートからフィリピン経済の今後について見てきました。人口増加や高い労働力から景気は上向きと予測されますが、インフラの未整備や高い貧困率、治安の悪さは改善の余地があります。
ただこれらの問題を改善すべく大胆な対策が取られていますので未来は明るいでしょう。今後は課題のインフラが整備されるに伴って地価や不動産価格が急激に上昇することが考えられます。もしフィリピンの不動産投資を成功させたいなら、なるべく早いタイミングから始めることをおすすめします!